Twitterフォローしているコンビ芸人「東京ダイナマイト」のハチミツ二郎さん、以下のようなTwitterがあった。
もともとプロレス好きな私は、ハチミツ二郎さんのことを「東京ダイナマイト」の漫才やコントよりも、プロレスを通じて知りました。
東京ダイナマイトはM-1の時くらいしか知らないけど、大仁田厚と試合したり、エロ本作ったり、今どき流行らない(失礼!)型にはまらない生き方が、いや、だからこそ失礼を承知で言うと、私も同じで型にハマれない生き方しかできないからこそ、ハチミツ二郎さんは、男が好きになっちゃう芸人さんなのだ!
そんな私も今回のCOVID-19での重症化における一件、驚いてYouTubeを確認したファンの1人だ。
そしてTwitterにある、「しばらくは無料」のこのnote。
「COVID-19」という、どストレートな題名。
何気なく読んでみたら、とても大切なことが炸裂している内容で、他人事に思えずバッチリ看護師の視点から読み込んでしまった。
てか、これは看護師が読まなきゃいけない内容だ。
ハチミツ二郎さん渾身の約1万5千字の体験記、その感想文を生意気にも少しだけ・・・。
飾らない意見がそこにはある
芸人なのにサラリーマン。
その経緯は割愛されているが、コロナ禍で働きコロナウイルス感染を予防する日常の中で、いわゆる風邪症状が出現・・・そこからこの話は始まる。
感染源や疑いに関しては触れられていない。
ただ、日付とともに克明に状況が記録されている。
というと少し硬い印象を持つかもしれないが、要点を押さえつつ、エッセイ風に書かれており読みやすい。
病歴から持参するに至ったパルスオキシメーターが、一気にコロナを炙り出す。
このくだりは「酸素飽和曲線」を思い浮かべつつ読むと血の気がひく。
そもそもこのnote。読み進めていくうちに、身につまされてくる。
その理由は終始「患者さんの言葉で書かれている」からだろう。
かざらない文書はとてもリアルだ。
「主治医から・・・と言われていた」
「看護師さんが言った」
そう、いつも私は「言う側」「伝える側」。
読んでいて、徐々に息が詰まる。
勤務中、当たり前のように繰り出している声かけが、態度が、どんなふうに受け止められてるのだろうか。
看護師を長年やっていると麻痺しているのかもしれない。
自分で自分を疑わないようになっていたかもしれない。
そんな気になってくる。
ハチミツ二郎さんは
「オレはこの人に助けられたと言っても過言ではない」
と言うくだりは、まさにそれを考えさせられた。
そしてその後、ハチミツ二郎さんは8日間眠り続けること(鎮静薬を用いた人工呼吸管理治療が8日間)となる・・・。
ハチミツ二郎さんが選んだ「ベスト看護師」とは
目覚めてから、ハチミツ二郎さんが見る看護師はまさにリアルだ。
「ベスト看護師」
「天使だ」
ハチミツ二郎さんが評した看護師さんが描かれる。
その女性看護師はおそらく看護技術も優れていただろうが、描かれてるエピソードは意外な場面で称賛されていて、思わずグッとくる。
どうしても、看護業界は看護技術や知識こそが「立派な看護師」と教育してしまう傾向が強い。
私は常々そこに違和感を持ち続けており、それも立派だが、もっとコミュニケーションスキルや相手の望むことを察知する洞察力、もっと陳腐な言葉で言えば愛嬌・・・といった「総合力(人間力)が大事だろ!」と考えている。
ただ逆説的に言えば、看護技術や知識は誰でも誰にでも教育することができる。
点数化することができる。だから、そこに執着しやすい。
コミュニケーションスキルや洞察力は、そう易々と会得できるものではない。
この看護師さんはきっと、そういう意味で「ベスト看護師」なんだろうな、と思うと、会ってみたい気がした。
そんな中、ハチミツ二郎さんから「不良看護師」と評されるエピソードが描かれる。
弱者と強者が見え隠れ
ハチミツ二郎さんのnoteの中盤に描かれる看護師の対応は、読んでて辛い。
あえて言うが、私はコロナ病棟で勤務していない。したことがない。
なので、本当のところ、コロナ病棟で勤務するストレスは未知数だ。
特に東京などの一時期2000人を超えるような都市部の病院で勤務していたら、想像を絶するストレスだろう。
だからといって、正論ばかり吐くことは簡単すぎて気が引ける。
そんな思いを持ちながらハチミツ二郎さんが出会った看護師たちの振る舞いを読むと、ここでも息が詰まる。
男性看護師のエピソードは「あぁ・・・・」とため息しか出ない。
ハチミツ二郎さんも素直に「看護師失格だと思う」と書かれていて、申し訳ない気持ちになってしまう。男性看護師だから、尚更かもしれない。
コロナ病棟で働いたこともない私が言うのもなんだが、失格なんだろうな、彼は。
我々はプロなんだ。そこは忘れてはいけない。
師長経験そこそこの私ごときの推測で申し訳ないが、患者さんに対してそう思われてしまう看護師は、大いにして現場を選ばない。
のんびりした臨床現場でも、劣悪な臨床現場でも、ダメなことをやる、一定数その看護師はいる。
環境はあくまでも要因の1つであって、根本はやはり看護職をしている人に問題がある。
特に、ハチミツ二郎さんはどんな舞台でも最善を尽くすプロの芸人(YouTubeでも同じような例えをされている)。
看護師というプロである自覚の薄さを見抜かれたのだろう、そう評価されたのは仕方がない。
極論だが私は常に思っている。
「医療者と患者」は「強者と弱者」の関係性だ。
病気になったら、みんな弱くなる。身体も心も弱くなる。
そこを一瞬でも忘れてしまうと、医療者はあっという間に「強者」になってしまう。
医療者側に自覚はなくても、あっという間に「強者」になる。
そこもハチミツ二郎さんは丁寧に描いている。
そうだよな、そんな看護師がカッコ良かったり、キレイには映らないよな。当然だ。
その後、張り詰めた看護師を支える婦長さん(原文ママ:師長が今時の呼び方です)のシーンも描いてくれている。
そうなんです。
本当にそんな些細なことで、スタッフの心を抱きしめてあげることができるんです。
そこで改めて思ったんですよ。
リーダーの何気ないスタッフを思いやる行動って、実際の臨床看護に影響するんだなぁ、って。
観ている患者さん、実感する患者さんはいるんだなぁ、って。
勉強になります。
看護師は特に読むべし
確かハチミツ二郎さんはWordもおろか、パソコンを触り出して間がないはずだ。
この文字数をパソコンで作成されたのか、スマホで打ち込んだのかはわからないが、きっと何度も何度も書き直しては消しの繰り返しだったのだろうと想像する。
そして、これはおそらく我々医療者に向けた内容だと私は勝手に思う。
変に医療者に媚びるわけでもなく、糾弾するわけでもなく、喜劇でも悲劇でもなくでもない、リアルな声だ。
「COVID-19に感染しました、すいませんでした」
という、一時期目にした著名人のわからない謝罪ブログでもない。
この世界中に猛威を振るった感染症と闘った1人の人間として、父親として、夫として、弟として、息子として、芸人として、患者としての視点で書き込まれている体験記だ。
きっと入院中に奥様、娘さんも大変なご苦労をされただろうな・・・。お疲れ様でした。
そして何より、ハチミツ二郎さんがまた芸能の世界でご活躍されることを、いちファンとして応援します!
我々看護師はこれを教材として読まずしてどうする!?
今はハチミツ二郎さんのご好意で無料です。
心して読むべし。
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